弱点を見せたらプロでは生きていけない。

『弱点を見つけたらそこを徹底的に攻める。欠点を発見したら、そこをいたぶる。球技とは、本来、そういう側面をもっているものだろう。』(『ジムナジウムのスーパーマン』山際淳司著より)。

2013年4月23日、ヤクルト対広島第4回戦(神宮球場)、1対1の8回表、二死走者1・2塁、登板した江村投手が前田選手へデッド・ボールを与えた。

このシーンを見てある記憶がよみがえった。

2005年10月7日、ヤクルトの丸山投手は対広島戦に初先発した。2回表、前田選手は、死球を受けた途端に丸山投手を睨み、怒鳴りつけた。丸山投手はその剣幕に怯えた表情をした。弱みを見せた丸山投手は、案の定、次打者に本塁打される。

続く、6回表。丸山投手は山崎選手に再び死球し、次打者嶋選手に2ランを喰う。

その後、丸山投手の野球人生は低迷し続けた。結局、自由契約になり球界からさった。

丸山投手は、勝負師にあるまじき表情をした結果、精神的弱さを突かれた。弱点を見せたらプロでは生きていけないのだ。

江村投手の投球は前田選手の左手首を直撃した。前田選手は江村投手に目をむき、怒鳴りつけ、にじり寄った。両軍入り乱れ、乱闘に発展した。

マウンドに残った江村は涙目だった。広島・福山市出身の江村投手は「ヤバイと思って…頭は真っ白でした」と。小さい頃からテレビで見ていた前田選手への死球に硬直した。

だが、目の前の打者に集中し、後続を断ち、直後の攻撃で打線が3連打2点で勝ち越した。プロ初勝利。

「江村の投げっぷりが3連打につながった」と宮本選手。

さて、次の投板で彼がプロで生きられる精神を持っているか真価が問われる。