スコアシートを読む楽しみは“記録は記憶を呼び起こす”ことだ

1958年(昭和33年)から2015年(平成27年)までの日本野球機構の公式スコアシートを野球殿堂博物館で閲覧できるようになった。

そこで、プロ野球史上たったひとりの「Only Play」選手、初めての「First Play」を見つけて、そのプレイの内容をスコアシートで読み解いた報告をする。

 

スコアシートを読んだりしていて楽しいのは、この記録は「そうかあのプレイだったのだ」と思い出すことだ。

“記録は記憶を呼び起こす”のだ。

1994年6月26日日本ハム対オリックス15回戦(東京ドーム)試合開始時間午後1時30分。

1回裏日本ハムの攻撃、オリックス高橋功一投手に対し1番打者広瀬哲朗は2b-2sからの6球目を中飛する。オリックスの中堅手イチローが捕球して1アウト。

2番打者高木豊は2b-2sからの4球目を空振三振して2アウト。

3番打者田中幸雄は2b-2sからの5球目を左翼に飛球を放つ。ところがスコア記録はF-8となっている。

このスコアのメモ欄に「左翼手が打球を見失ったが、カバーした中堅手が捕球」と書いてあった。

この試合のオリックス左翼手高橋智は、東京ドームで試合開始時間1時30分だと白い屋根に飛球が紛れて見失ったようだ。それを中堅位置から走って来た中堅手イチローが捕球したのだ。

記録は中堅飛球だが飛球方向は左翼なのだ。

スコアF-8はあの「高橋智左翼が上を見て、飛球を失ったジェスチャーとその後ろを脱兎の如く走りながら飛球を捕球するイチロー」映像なのだ。

スコアを読むと“記録は記憶を呼び起こす”典型的な場面だった。

因みにイチローの捕球アウトコールした左翼線審は小林晋審判員。